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アスリートの在り方を問う、大坂選手の行動がもたらすスポーツ業界の変化2021.06.07

アスリートの在り方を問う、大坂選手の行動がもたらすスポーツ業界の変化
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女子プロテニスプレイヤーの大坂なおみ選手がうつ病をを理由に全仏オープンを一回戦を勝ち上がりながらも、棄権をしたことが大きなニュースとして取り上げられています。その主な理由は試合後のインタビューの拒否によるものです。ニューノーマルのスポーツの在り方がいま見直されています。

試合後のインタビューは義務

試合後のインタビューは、大会に出場するための契約書に記載されており義務づけられています。ということは、選手は『大会に出る=インタビューを受ける』ということになります。他の選手の大半は、このことを理解しているため、大坂なおみ選手の行動(インタビューのボイコット)に対して、やや反対の立場でした。
契約書に書かれている以上、それを守れないのならと、全仏オープンの大会事務局は、大坂なおみ選手に約160万円の罰金を課しました。中々高い罰金だなあと思いますが、テニスはトーナメントの優勝で約1億円ほどの賞金を得るので、そこから考えると妥当だともとれます。
しかし、2週間ほどの大会期間中の二日に一回のペースで2,3時間の試合をこなしそのすべてに勝ち続けなければ優勝できない今のトーナメント制を考えるとそれが安いのか、高いのか微妙なところでもあります。

メンタルケアの重要性

大坂なおみ うつ
当初は、理由も言わずインタビューのボイコットに踏み出た大坂なおみ選手ですが、実は心の病(うつ病)を患っていたとのこと。心中お察しします。かく言う筆者もテニス経験者で、今でも趣味としてもテニスを続けています。テニスというスポーツはフィジカルももちろん大切ですが、それにも増してメンタルのスポーツとも言われています。日本人が中々優勝できないのもこのメンタルの部分の弱さであるとよく海外メディアに指摘されていました。そんな中、現れた大坂なおみ選手の存在はとてもポジティブで明るいニュースでしたが、実は彼女も精神的にかなり追い詰められていたということなのでしょう。

孤独なスポーツ『テニス』

テニスにおけるメンタルタフネスの重要性は、趣味レベルでプレイしている私でもよくわかります。緊張したり、落ち込んでいたり、自分に自信が持てないと、入るはずのものも一切はコートに入らなくなります。ましてやプロ選手は大歓声の中、1人でコートに立ちます。また、試合中のコーチによるアドバイスは一切禁止されており、観客席で見つめるコートの手の動きがサインに見えたと、コーチの退場などもあり得る世界なのです。ボクシングではセコンドがいて、アドバイス出来ますし、ゴルフでもキャディーがいます。バスケットもバレーもタイムアウトがあります。孤独な戦いに打ち勝たなければその大会で一人しか選ばれない優勝者にはなれないのです。大坂なおみ選手はそれを何度も達成しているのです。そんな彼女が、鬱に苦しんでいたとは。。。

ファンはアスリートの苦しむ姿を見たいわけではない

プロであれば、インタビューは当然という認識のプロスポーツ選手が大勢います。確かに、今まではそうでした。プロスポーツというのは、スポンサーや観客などがお金を払うことで成り立っています。その観点で考えれば、プロスポーツ選手が試合後にそのお客さん(観客やスポンサー)に感想を述べるには確かにセットであるとも思います。しかし、本当にそうでしょうか。
大坂なおみ うつ
スポーツを応援したり、観戦したりする人々の大半はそのプロとしてのプレイのすごさ、華やかさ、カッコよさに惹かれて見ています。当然、その後のインタビューなども楽しみの一部でもあるでしょう。ちなみに幼いころ、父の贔屓のチーム、この場合は中日ドラゴンズでしたが、最終回でサヨナラ安打を打たれた瞬間に、テレビを切っていたのが印象的でした。しかし、インタビューはあくまでプレイがあってこそ、です。負けた選手も買った選手も、基本的にはプロフェッショナルで、プロ通しのレベルの高い戦いこそがプロたる所以です。ということは、プレイなくしてインタビューは存在しないわけです。素人にインタビューすることは、プロスポーツの世界ではありえないし、誰も興味を持ちません。素晴らしいプレイがあってこそなんです。そして、そこで大変な思いをして負けてしまった選手を追い詰めるようなシーンはファンは見たいとは思いません。苦しんでいる選手の姿を喜ぶファンはいません。

多様なメディア、チャンネルがある

現在、何かを発信する上で多様な選択肢があります。SNSもそうですし、いろんなメディアやチャンネルが存在します。アスリートの心のケアを考えたときに、必ずしも、スポットライトを浴びた晒し者の状態で受ける必要はありません。好きなタイミングで、発信しても良いのではないでしょうか。その方が、視聴者やファンもアスリートのリラックスした本音が聞けてより楽しめるのではないでしょうか。現在のやりかたは、これだけいろんな発信方法がある中で、確かに違和感のあるインタビュー形式ともとれます。

ナイキは大坂なおみ選手を支持

2021年5月31日、アメリカのスポーツ用品大手で主要スポンサーのナイキが大坂なおみ選手への支持を表明しました。
その中で、大坂なおみ選手がうつ病との闘いを打ち明けたことを称賛しました。シュードックという本を読んでから、創業者のフィルナイトを尊敬している筆者もナイキの素早いリアクションと対応に感服です。ニューノーマルのスポーツの在り方を、世界最大手のスポーツ企業が自ら発信したわけです。他の企業もおそらく追随するであろうと思った矢先、
アメリカのクレジットカード大手のマスターカードは、
『大坂なおみ氏の決断は、個人の健康と幸福を優先することがいかに重要かを改めて示した。当社は彼女を支援し、コート内外で重要な問題に言及する彼女の勇気をたたえる』と声明を発表し、
スイスの高級時計メーカーのタグ・ホイヤーは、
『勝利した時だけでなく厳しい時期も支える』と表明ししました。

世界の動きは、大きな組織的圧力より、個人や個を大切にする時代へと変化しています。それをしっかり受け止めた行動をしていかなければ、大きな組織も簡単に崩壊するでしょう。
大きな組織も所詮は個人の集まりなのだから・・・。

ナイキは声明で、『我々の思いはなおみと共にある。当社は彼女を支援し、心の健康にかかわる自身の経験を共有した彼女の勇気を認める』と発表しました。

声を上げる勇気を私たちも称賛できる生き方をしたいと思います。

文:RIRISEA

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