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新たな葬送「堆肥葬」はニューノーマルとなるのか?2021.05.03

新たな葬送「堆肥葬」はニューノーマルとなるのか?
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『シュウカツ』というと、学生では就活です。いわゆる就職活動です。しかし、ある程度の年齢になるとこの漢字が変わり、『終活』となります。終活とは、『人生の終わりのための活動』の略語であり、年齢を重ねるごとに死と向き合う時間が増え、その度に生まれる残りの人生を豊かにするための見直しの時間とも言えるでしょう。

この終活という言葉が流行語にもなったように、『どう死ぬか」『どのように最後を迎えるか』という死生観の自由化が進んでいるようです。ニューノーマルのライフスタイルを過ごした後の、ニューノーマルな終活とはいったい??

「世の中の形式に合わせるのではなく、自分の死に方は自分で決める。」

まるで北斗の拳の拳王ラオウのようにカッコいい考え方ですね。確かラオウのセリフは「我が生涯に一片の悔い無し」ですね。この風潮と共に、今まで日本で主流な埋葬の手段であった火葬の他に、自然葬と呼ばれる遺骨を自然に還す方法も徐々に社会に受け入れられるようになっているようです。

今回は、2020年5月よりアメリカワシントン州で施行されている世界初の堆肥葬(たいひそう)についてご紹介をしていきます。

堆肥葬とは?

堆肥葬とは、人間の遺体を堆肥化し、自然へと還元する新しい埋葬方法です。

アメリカ・シアトルの企業「RECOMPOSE」(=リコンポーズ)が世界で初めてこの堆肥葬を実現しました。この堆肥葬についての法案が、2019年4月に可決され、2020年5月より実際に施行されています。RECOMPOSEは、この堆肥葬の実用化に向けて世界初の堆肥葬を行う場所を2021年にオープンをする予定です。

具体的な葬送方法は、
ウッドチップが敷き詰められた再生可能な棺を利用し、遺体を堆肥に生まれ変えさせる専用のカプセルに棺を収納することで、遺体を養分に変えていきます。遺体を分解した後は、養分を含んだ土に生まれ変わり、遺族が持ち帰るか森林の育成に使用するか選択をすることが出来ます。どちらを選択したとしても、遺体を自然に還元することが出来るようになっています。

火葬と比較をして、遺体を焼く必要がないため、葬送に必要なエネルギー量を格段に減らすことが出来ます。そのため、今までの葬送の方法の問題であった二酸化炭素の排出を抑えること(CO2の削減)が可能になり、まさに地球に優しい葬送となっています。

堆肥葬と自然葬の違い

現在の日本では火葬以外にも様々な葬送方法が根付いています。その中でも特に、自然葬を選択する人が近年増加しています。自然葬とは「人も生き物であり死後は自然に回帰する」という考えの下、墓場に埋葬をせずに土の中や森林、海などに散骨をする葬送です。
自然葬と堆肥葬とでは、墓に埋葬をせずに遺体を自然に還元するという点では同じですが、一番の違いは、人を作物や食物の栄養となる堆肥として利用するかしないかという点が大きな違いです。

そのため、堆肥葬は自然葬に代わる新たな方法として注目を集めています。

堆肥葬が日本で普及するために

「人の死」はそれぞれの死生観や信仰する宗教などを基に考えられることが多く、人間の弔い方に正解は無数存在します。

世界各国に目を向けると、「神が降りてきたときに死者が復活する」と考えられているイスラム教やキリスト文化圏では、土葬文化が深く根付いています。

日本の場合、最も信仰者の多い仏教は、葬送方法には特に規制や思想は存在せず、どんな葬送方法でも認められていますが、実際は多くの人が火葬を選択しています。規制や思想が存在しないため、昨今では、火葬だけでなく、自然葬を行う人が増えているもよう。

そんな日本で、堆肥葬が普及するために必要な事は、宗教観よりも倫理的な考え方なのではないでしょうか。

堆肥葬の「人の遺体を森林や植物の土壌にする」という点は、遺体を自然に還す自然葬と似て非なる部分だと前述しました。

この違いが重要で、
人間の遺体から生まれた堆肥で森林や植物を育てるということは「遺体を利用する」とも捉えることが出来ます。

人も自然の一部と捉えるのか、遺体を植物の為に土壌に活用するのか、というどちらの観点で判断するかが、堆肥葬が普及するための重要な論点になると考えられます。

とは言いつつも、日本の大都市では、かつて歴史上いくつもの合戦が繰り広げられてきています。何百年前は何万対何万の大軍の合戦があった、と言われる場所は無数に存在します。そして皆そこに家を建てて住んでいるわけです。庭で家庭菜園をする人もいるでしょう。要は、その事象が記憶の範囲内か、または自分との関係性によるということでしょうか。

まとめ

多様性という言葉の下、様々な生き方や文化が共存する時代に変わりつつあります。

この風潮と共に、今まで主流であった火葬だけでなく海や川に散骨をする自然葬を選択する人が増え始めるなど、葬送も多様化が認められつつある傾向です。お墓をつくり作り続ければ、いずれ地球の土地は全部お墓になってしまうと学生時代ぼんやりと思ったものですが、ありえない話ではありません。

「どう生きるか」という人生の選択肢が増えたからこそ、「どう死ぬか」という人生の最後の在り方を深く見つめてみる事も大切かもしれません。

理想的な死に方を実現するためにも、この堆肥葬など、自分らしい最後を迎える葬送方法も生まれ続けています。

文:niimi

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